態度価値
先日、某ドラッグストアーにお勤めの私のお客さまから、考えさせられるお話を聞きました。
最近は新型コロナウイルスの影響で、ドラッグストアーの前には毎日、開店2時間前からマスクなどを買い求めて行列ができるようです。
ご存じの通り、マスクの需要供給バランスは崩れ、お店もマスクが入ってくるかこないかはその日に分かるそうです。
お店が開店し、私のお客さまが冒頭、
『大変申し訳ありません。本日のマスクの入荷はございませんでした。』
と、並んでいた方々に申し上げると、多くの人はそのまま帰っていくか、又は他の商品の買い物をされるのですが、こういった態度をとる人が必ずいるそうです。
『なんで入ってこうへんねん!』
『どれだけ待ったと思ってんねん!』
『いつ入ってくるかはっきりさせろ!』
などと、自分の顔をスタッフの顔のすれすれにまで接近させ、大きな声で怒鳴り散らす人です。
極めつけは、
『なんでお前、マスクしとんねん!』と、マスクを引っ張られたとか。
それでも、ただ、申し訳ありませんと言うしかない、辛い状況をお話くださいました。
この話を聞いて、ふと思い出すのは【夜と霧】の著者である、ヴィクトール・E・フランクルの『態度価値』という言葉です。
フランクルはユダヤ人の精神科医であり、第二次世界大戦中、ドイツのアウシュビッツ収容所に強制収容されていました。
アウシュビッツでは、過酷な労働を強要され、暴力を振るわれ、食事は1日パン2つという絶望的な環境の中ではありましたが、そんな中でも歌を歌うもの、人を励ますもの、わずかな食事を分け与えるものがいたのです。
そこでフランクルは悟りました。
『どんな環境にいても、何をされても、そこでとる態度だけは、決して誰にも奪われない自由なものである』と。
これを態度価値と名付けました。
コロナウイルスによって世界中が大変な状況下にあります。
しかし、その時その時、自分がとる態度だけは誰にも奪われないものなのです。
本当に大変な状況です。
怒鳴り散らす人の人情もわかります。
しかし、自分ならどういった態度をとるか。状況をコントロールするのは出来ませんが、態度の自由を考え、行動できればと思いました。