魔女の宅急便
『魔女の宅急便』
これは平成元年に公開かれたジブリ映画ですが、私にとってこの魔女の宅急便は、心の中の、大切な大切な場所に、色あせず、しまいこんでいる、そんな大好きな映画です。
『魔女の宅急便』との出会いは、テレビCMでした。物語の中で流れる、『海の見える街』という曲が聴こえてきたとき、心のなかをぎゅっと掴まれたような、切なさで締め付けられる経験をしました。
まだ小学校5年生でしたが、多感な時です。どこか、生まれてきた時にタイムスリップしたような、かなしいような愛情のようなものを身体中で感じ、涙が溢れてきたのです。
本当に不思議な体験でした。
どうしてもこの映画が観たくて仕方がありませんでしたが、当時、主人公が女の子の映画を、映画館で観るというものに恥ずかしさがあったのでしょう。親には映画を観たいとは言えませんでした。
しかし、この小さな夢はすぐに叶いました。
学校の体育館で、『魔女の宅急便』が、映画上映されることとなったのです。
この嬉しさは、もう格別のものでした。
『海の見える街』が流れ、大きな時計台のある、ヨーロッパ風の素敵な街が大きなスクリーンに写し出されます。曲と街の世界が一体感を増します。
キキという女の子が、一人前の魔女になるために修行する姿が、まだ小学校5年の子供ではあったけれど、だんだん大人に向かっていくんだなぁという、あの不安定な頃の思いとリンクしていました。
最後に流れる、荒井由美の『やさしさに包まれたなら』がまた、この映画にぴったりです。本当に神様のような、大きな存在が包んでくれるような気持ちになりました。
あれから30年。
今、ふと『海の見える街』を聴くと、あの頃に戻ります。
歳は重ねるほど、戻れる場所が増える。
そして、戻れるアイテムの1つに、音楽があると思います。
音楽。本当に素敵なアイテムです。
子供たちにも、今、どんどん素敵な音楽を聴いてもらいたいと思います。
そしていつか、大人になったとき、その音楽がきっと、人生の醍醐味を与えてくれるでしょう。
魔女の宅急便。この世に、このような映画が生まれ、出会えたことに感謝です。
平成元年、1989年は私にとってセンシティブな1年であることは、間違いありません。