猪熊弦一郎
東京にあるJR上野駅の改札には、猪熊弦一郎が
画した『自由』という名の大きな壁画があります。
写真が掲載されていましたが、非常に存在感の
ある大きな壁画です。
1945年の終戦後には、戦争で親を亡くした
多くの子供や復員兵らが上野駅に身を寄せていた
といいます。今では想像も出来ないことです。
この『自由』は1951年、上野駅の殺伐とした
人々の心をなごませたいと願う、ある青年の
発案から作られたそうです。
当時は絵の具が思うように手に入らず、
進駐軍のペンキを使いました。
制作には、古い工場の壁にパネルを何枚もはって
足場を組んだそうで、窓ガラス1枚も残っていない
工場内には寒風が吹き抜け、ストーブで手を
温めながら絵筆をにぎったといいます。
壁画には、リンゴを収穫する女性、猟師や木こり、
スキーをする若者などが描かれていて、
にぎやかな雰囲気をかもし出しています。
しかし、実際には駅の案内所や看板、
垂れ幕などが壁画の一部をさえぎっているそうで、
雑踏の中、絵を見上げる人は皆無だと
書いてありました。
なぜこの壁画が生まれたのか。
その想いや歴史を省みることで、
少し立ち止まって感じてみる。
そんな事こそが、心豊かになる教養だと思います。
次、東京へ行く際には、上野駅に寄って
この絵をじっくり眺めたいと思います。