dantelのブログ

日々の心境、思想、学び、気づき等を書き留めています。いつか、後世への遺物となることを願っています。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館へ

先日ブログで記した猪熊弦一郎現代美術館に行って参りました。

新聞で故猪熊弦一郎氏を知り、11月30日まで開催している『戦時下の画業』を何とか現場現物で見たいと思い、最終日に香川県丸亀市まで強行突破してきたのです。

丸亀市駅すぐにある美術館は、非常に美しい外観をしており、そこにあるというだけで素晴らしいフィールドを作っているように感じられます。

この戦時下の画業展では、猪熊が1941年~45年のまさに太平洋戦争時、文化視察または作戦記録画を描く従軍画家として戦地に派遣され、各戦地で描かれたものを主に展示してありました。

中国、フィリピン、ビルマなどに派遣された猪熊が作戦記録画として描いたものは、確認できるものでたった2点しか現存していません。そのうちフィリピンのコレヒドールを描いた1点は、戦時中に行方不明となっているようで、たった1点、ビルマの泰緬鉄道建設現場を描いた『◯◯方面鉄道建設』のみ現存しているそうです。

猪熊が戦争を直接的にあらわした絵はほとんど残っていませんが、一方で、従軍先で出会った人々や風景を描いた油彩画などは、猪熊本人がたくさん保管していたといいます。

現物の絵をじっと眺めていると、猪熊が本当に描きたかったもの、描きたくないが描かざるをえないもの、その背後にある彼の葛藤や矛盾のようなものが、絵を通じて私なりに感じました。

表現の規制が激しく、自由などもない時代にも、人物や美しい風景などの本当に描きたいものを描かずにはいられないといった心をうかがったように思います。

戦後は、自由を取り戻したかのような、エネルギーを感じとれるような作品が多く並んでいたのも、印象的でした。

戦後、猪熊は自身の戦争体験をほとんど語らなかったといいます。

猪熊は言葉では語ってこなかったですが、残してきた絵を持って、私たちに戦争というものを語ってくれているように思います。

現場に行けた事、本当に良かったですし、急な私の衝動を認めてくれる家族の寛容さにも感謝致します。

f:id:dantel:20171203230212j:plain